テロ支援国家指定解除に際して
平成20年6月27日(金)
アメリカのブッシュ政権は、26日、北朝鮮のテロ支援国家指定を解除する旨、議会に通知した。
この解除には、過去六ヶ月間北朝鮮がテロ支援をしていないこと、今後テロをしないと確約していることが必要である。
よって、ブッシュ大統領は、この度の指定解除で北朝鮮の行った拉致をテロだと考えていないことを表明したことになる。
かつてアメリカは、イランにおけるアメリカ大使館員人質事件に際して、人質が解放されない一日一日が、拉致監禁の継続であるという態度で臨み、日本人拉致に関しても、解放されない限り「現在進行形のテロ」であるとする被害者家族の訴えに理解を示し、大統領自身が横田早紀江さんにホワイトハウスで会った。
このアメリカの態度の変化とこの度の指定解除は、アメリカ人が使う言葉で応えれば、「裏切り」である。
数年前に、ブッシュ政権のイラク攻撃に対して積極的賛意を示さないフランスに対してのアメリカの露骨な不快感の表明とアメリカ国内のフランス製品に対する不買行為の広がりを参考にするならば、我が国の朝野は、この度の指定解除に対して、
「裏切り」という非難とアメリカ製品ボイコット運動を始めても不思議ではない。アメリカ人ならそうするであろう。そして、こうする方が、アメリカ人に日本人の気持ちがよく伝わる。
しかし、我が国の総理大臣は、記者の質問に対して、
「(テロ支援国家)指定解除、核の問題が解決に向かうのなら、いいんじゃないですか。」と答えていた。
この問答を見て、正直、「アホか」としか思わなかった。
そこで、以下、何故アホか簡潔に説明したい。
1、アメリカは14年前の米朝ジュネーブ合意と同じように北朝鮮に騙されている。
従って、日本の総理のいうように、核の問題は解決しない。
2、しかし、14年前と今とは騙されようが違う。
アメリカは14年前のジュネーブでは本当に騙された。ところが、今回の北京では国務省のライスとヒルは騙されたと分かりながら騙されている。つまり騙す相手は日本という訳だ。
従って、今回はジュネーブと違って、冷却棟の爆破という興行つまりサービスが工夫されている。福田君ならこれで安心すると思われているのだろう。
3、では、何故、アメリカは、この度、テロ支援国家指定を解除するのであろうか。それは、アメリカが、北朝鮮の核は、アメリカに届かないとの確証を得たからだろう。
アメリカの態度変更はアメリカが死活的な問題と見なしているこの部分について安堵し得る結論に達したからだとしか考えられない。
4、はっきり言うならば、北朝鮮の核は、日本には届くがアメリカには届かない。そして、アメリカは日本に届く核を容認したのだ。
つまり、総理大臣のいう「核の問題が解決に向かう」とは、アメリカにとって解決に向かうのであり、日本にとっては解決に向かうどころか、露骨に核の脅威にさらされる事態が容認されるのである。
以上の状況で、「いいじゃないですか」と日本人が言うのであるから、ライスやヒル、そして、金正日ならずとも、アホかとしか言えない。
では、結局、日本にとって、六カ国協議とは如何なるものと我々は認識しておくべきなのか。六カ国協議とは如何なる作用を我が国に与える枠組みなのか。それは、以下の通りである。
「六カ国協議とは、
①北朝鮮の我が国に届く核を容認し、
②我が国をして北朝鮮に援助せしめ、
③我が国が独自に核抑止力を確保することを禁止する
多国間協議である」
結局、我々は国家存立の原点に戻って、我が国の安全と同胞の救出に取り組まねばならない。
この度の、アメリカによるテロ支援国家指定解除は、この当然の課題を我が国に突きつけている。
1、日本人救出は日本が取り組む。同盟国がするのではない。
2、日本を守るのは日本である。同盟国がするのではない。
3、日本は、独自の核抑止力を確保しなければならない。同盟国の核の傘はない。
このまま多国間協議に付き合っておれば、拉致被害者は見捨てられる。我が国政府は、我が国の金融力等の国力の総力を挙げて北朝鮮に流入する金を阻止して、今まで為されてきた制裁の効力を維持すべきである。
例えば、国際金融機関が北朝鮮融資に踏み切る気配を見せたならば、そこから我が国の出資を引き上げるべきである 国連が、北朝鮮の拉致問題を不問にするならば、国連への出資金を支払ってはならない。
政府は、以上のような様々な措置の検討に入らねばならない。もちろん、自衛隊の運用も具体的な検討に入らねばならない。