国会の会期末にあたって
平成16年11月22日(月)
先の11月初旬のこの通信から今まで、北朝鮮拉致問題や中国軍の潜水艦の領海侵犯などの動きがあった。今振り返りそれを位置づけたい。
事件現場でのニュースのように、その最中に報告する方法もある。しかし、今回は「現場」が過ぎ去るまで待つことにした。
但し、在日外国人への参政権付与法案の審議は、現在の国会会期末でも続いているので現場報告だ。
拉致問題実務者協議
いつも通り、ピョンヤンで行われた会談に日本の期待が集中した。ピョンヤンに行った日本側は、大変な苦労をしたと思う。
斎木審議官などは、「ご苦労さん、やせたなー」というと「5キロやせました」と言った。ほぼ全員がスリムになって帰ってきた。食事等の苦労もあっただろうが、それでやせたのではない。
やはり、敵地で苦しい協議を余儀なくされたのだ。
そこで、その「苦労」を生み出す協議の構造であるが、
それは、日本側が5月22日の日朝首脳会談で金正日の約束した「再調査の結果」を聞きに行ったことであり、答える側の北朝鮮が答えることのできない者を出してきたことである。
北朝鮮国内で、拉致問題に答えることができるのは金正日だけだ。ほかの者は、たとえ知っていても真実は述べることはできない。
しかも、「再調査」とは何か、と考えれば、北朝鮮にとっては、2年前に首領様である金正日が、8名死亡と言ったその「死亡」の証拠をさらに「調べる」ということ以外にあり得ない。
北朝鮮の政府組織にとっては、金正日の言ったことが絶対で、いかに「再調査」しても金発言の内容と異なる結果はだせないからだ。
従って、日本の期待が集中した形で、ピョンヤンに入り砂をかむような交渉に臨んだ日本側交渉団は「苦労」したであろう。
このような形つまり北のペースに嵌りながら、ピョンヤンに行かされる者の苦労は計り知れない。
首相が、北朝鮮に絡み捕られているのに、実務者段階でで挽回することはできないのだ。
しかし、不可能な挽回の期待が集中した。つまり、彼ら日本側は、武器弾薬を与えられることなく、敵地に送り込まれた実戦部隊のようだった。厚い防塞に阻まれ続けたのだろう。本当の戦闘なら生きて帰ってこれない。
今回の不毛の結果の責任は、二回も首脳会談をした首相にある。このパフォーマンスに似た首脳会談における総理の敗北が現れたのがこの度の協議である。
では、日本側のペースでの実務者協議とは何か。
それは、この度の反対だ。
今回は、金正日は、八名死亡といったが、信じられない、従って、死んだと信じられるようにしてくれ、つまり、死んだ証拠を見せてくれという訪問だった。
この反対とは、
「八名は生きていることは分かっている。従って、日本に連れて帰る。出せ。我々が連れて帰らなければ重大な結果になる、この責任はすべて日本人を拉致した北朝鮮側にあると金正日に伝えるべし。」
という切り込み方だ。
結局、今回の協議においても、死亡の証拠は未だでていない。
火葬の習慣のない国で、火葬した遺骨ばかりがでてくる不自然さが目立ってきた。本人の写真やノートやメモなどは、むしろ生きている証拠だ。
北朝鮮は、横田めぐみさんだけの「証拠」をたくさん出してきた。拉致された直後の中学生のころの写真が持ち帰られたが、これを見た両親の、こみ上げるような悲しみと無念さに声をかけることもできなかった。拉致されたあとの、娘の瞳、これを見て母の目から涙があふれだした。これは、2年前の「死亡」と言われたときよりもつらくきつい仕打ちである。
なんと残酷な奴らだと思う。
もはや、経済制裁しかない。
自民党内では、はじめは緩い程度から制裁を開始して次第に強度を増していくという制裁案が検討されている。
私は、まず最強度の制裁を開始して、被害者を解放し始めたらそれに併せて制裁を緩和していく発想が本件には相応しいと判断している。
12月1日には、またぬけぬけと新潟に万景峰号が入港する予定だ。
拉致議連として既に官房長官に経済制裁実施と共に入港禁止の閣議決定を要請している。併せて、新潟の埠頭の管理者である新潟県知事に対しても、新潟埠頭接岸拒否の措置を決断されるよう要請している。
中国の原子力潜水艦領海侵犯について
この事件は、中国の威力偵察である。
我が国の対潜水艦哨戒能力を試しているのではなく、日本政府がどう動くかを観察しているのだと思う。
日本政府は、海上警備行動を発動した。適切であるが、中国はただ追跡しただけなので弱々しいとみただろう。
原子力潜水艦の潜航による領海侵犯は、最強度・最悪の侵犯である。何故なら、原子力潜水艦は核を搭載しているのが常識であるに加え、潜航して入るとはつまり、忍び込むということだからである。
(アメリカ第7艦隊の船が海面を浮かんで入るときには、今でも核反対出て行けと叫んで赤旗を振っている団体がいる。なぜ、赤旗の元祖中国の原潜には出て行けと叫ばないのか?)
かつて冷戦時に、ソ連の原潜がスェーデンの領海を侵犯した。その時、スェーデンはためらわずに爆雷を投下してソ連原潜を追い払った。
この度も我が国は、爆雷を投下して潜航中の原潜を強烈に揺さぶって船体をギシギシときしませ、乗組員が、日本は恐いと恐怖で失禁するほどやるべきだった。
それをやるのが国際常識だから、やられた方は納得する。
今回のように遠慮して中途半端なら、日本は弱気であると見て、また来る。
これが中国だ。
ともあれ、この度の中国原潜には、ご苦労さんというべきか。表彰状を送るべきか。
思えば、この10年、中国へのODAはおかしい不可だ、と言い続けた。
中国の海洋覇権主義は危険だ、このままでは尖閣も沖縄もはたまた自由主義国台湾も併呑しに来ると警告し続けた。
そして尖閣諸島にも上陸視察して、少しでも中国の本質をつまり共産主義独裁政権の本質(北朝鮮と中国は、同じだ。即ち軍事力のみを信奉する人権抑圧の独裁体制)を国民に広く知らせようと努力してきた。
それでも我が国からは、ODAは中国に垂れ流れ、毎年数百人の国会議員が北京を訪れて日中友好のレッテルの元に買収供応されてきた。
それが、一隻の旧式潜水艦で一挙に国民に中国警戒感が広がったようだ。
旧式の潜水艦だから、陸上にたとえれば、銀座を中国の木炭バスが煙をもうもうと吐きながら走り回ったようなアナウンス効果だった。
素晴らしい覚醒の効果があった。よって、表彰状ものだ。
これでも日本は、中国にODAを続けて、世界の物笑いの種になるのか!
また、政府内は、財政当局の都合から軍備縮小の方向に動き出しているようだが、とんでもない。
2期目のブッシュが米軍の再編に動き出している今、我が国もこれに連動して、海洋国家防衛に相応しい「軍備増強」を開始すべきなのだ。
・・・中国の原潜とその海洋覇権戦略が見えた今、この論に納得する国民も増えたはずだ。・・・この点も原潜の大きな貢献。
原潜のわが領海侵犯は、逆の効果を生んだようだ。
110年以上前の日清戦争前、清国北洋艦隊の巨艦である鎮遠などが日本周辺を遊弋して入港してきた。鎮遠などは、当時世界最大の軍艦だったから、日本を威圧するに充分であった。事実、日本人はその巨艦に驚いた。だが、臆病風に吹かれて肝を冷やしたのではない。
しかし、シナ側は、日本を震え上がらせたと得意だった。
ところが、これは逆効果で、日本海軍の司令塔である山本権兵衛は、準備怠りなく日清海戦に備え、黄海海戦で、鎮遠などを壊滅させた。それ以後、シナは亡国へ一直線で分裂していった。
・・・かつて日本人を刺激してこうなったという教訓である。
現在の中国共産党も、慢心した清朝と同じく歴史と日本人を知らない稚拙な集団である。
外国人参政権付与法案
公明党が提出して推進するこの法案を友党である自民党が引きずられて審議を始めた。
これは、国民国家の基本を分からなくする亡国法案である。
自民党の中には、賛否両論がある。民主党の中にも賛否両論がある。従って、自民党も民主党も党論が統一されないだろう。
しかし、会期末12月3日をひかえて、要注意である。妙な弾みで議会を通過してしまうかもしれない。
よって、与野党関係なく、廃案を目指す多くの有志が水面下で努力している。この同志は、超党派の拉致議連とメンバーが重なっている。
なお、事態の推移を見てからであるが、場合によっては、会期末に「対北朝鮮経済制裁を促す衆参の本会議決議」をすることを検討している。