日本政治の倒錯・・・イラク特別措置法を例にして
平成15年7月4日(金)
このたびのイラク特別措置法を点検すると、欺瞞の法案としか考えられないのである。
この法案は、自衛隊をイラクに派遣するに際し、「戦闘地域ではなく、将来も戦闘地域にならない地域」に自衛隊を派遣することを目的としている。
そして、仮に自衛隊が攻撃を受けても、正当防衛の要件を満たすとき、反撃ができるだけである。そして、攻撃を受ければ、「戦闘地域でない地域に」後退しなければならない。
したがって、例えば、任務遂行のために敵を制圧してその抵抗を排除して、孤立した村に水を運ぶというようなことはできない。
要約していうならば、この法案は、日本政府自らを
1、馬鹿と公表している
2、卑怯者・臆病者と公表している
3、国民を欺きながら軍隊を運用すると公表している
と言えるであろう。
以下、その理由を簡単に述べる。
自らを馬鹿と公表している理由
世界中で、「戦闘地域でないから」軍隊を出せると考えている政府は、日本政府しかない。日本以外の国の政府は、「戦闘地域だから」軍隊を出すと考えている。ということは、「戦闘地域でなければ」、軍隊を派遣してはいけないということ。これ、軍を抑制的に用いる政治の「節度」である。
しかるに、日本政府は、「戦闘地域ではないから」という理由で軍隊を出してくる。これは、我が政府自ら「節度」のない馬鹿であることを公表するものである。
自らを臆病者と公表している理由
イラクでは、フル装備の米英軍部隊も攻撃を受けて徐々に戦死者を増やしている。
イラクには、「戦闘が将来に渡って行われない地域」は存在しない。仮に存在するならば、そこは「米英軍に完全に守られた地域」くらいであろう。従って、法案によれば、自衛隊は、他国の軍隊に完全に守られた安全な地域でしか行動しないことになる。
よって、この法案は、日本人は臆病者で卑怯者だと公表している。
国民を欺く政府であると公表している理由
イラクでは、あらゆる地域で戦闘が起こる可能性があるのだから、結局イラクに出て行く自衛隊は、戦闘を覚悟しなければならない。しかし、日本政府は、国民に「戦闘がなく、将来にわたって戦闘のない」地域で活動させるのだから、戦闘は起こり得ないと説明して自衛隊を出すことになる。
よって、この法案は、国民に嘘偽りを言いながら軍隊を海外に派遣するのが日本政府であると公言することになる。
以上をまとめれば、日本政府は、軍隊を動かす原則を持たずに軍隊を動かす危険な政府であると評価されても致し方ない。
憲法の制約というわけのわからない錦の御旗を隠れ蓑にして、官僚に法案を起案させ、欺瞞のうえに欺瞞を重ねる従来の方策は、既に破綻している。国際的評価の低下という、決定的な国益の毀損をこれ以上放置できない。
自衛隊を出すなら、軍隊として国際法に則った運用原則の元で派遣するべきである。
手かせ足かせの「特別措置法」など実は不用有害なのだ。