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真悟が征く
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2001年より2002年3月まで
「大阪新聞」にて毎週金曜日に連載されていた西村真悟のコラムです。
真悟が征く
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平成13年10月19日掲載
「後方支援」だから、戦闘が迫れば自衛隊は逃げる。自衛隊は、逃げてくる難民がキャンプに入る前には目の前で殺されていても出ていって助けることは出来ない。このような言葉遊びの極めて奇怪な法案だけに関心を集中していては危ない。今こそ世界の大勢とオサマ・ビンラディンの戦略に注目しなければならない。
ビンラディンの戦略とは何か。全イスラム教徒を聖戦(ジハード)に立ち上がらせ、「文明の衝突」を起こすことだ。しかるに、九月十一日のテロ攻撃直後のブッシュ大統領は、ほとんどその戦略にはまりかけていた。彼は、キリスト教会で自らの「正義」を宣言した。その後、その「正義」を武力で実現する攻撃を「十字軍(クルセード)」と表現したのだ。この十字軍というキリスト教徒にとっての大義の旗が如何にイスラム教徒の怨念を奮い立たせるか、ヨーロッパとイスラムの歴史を少しでも知る人には明かであろう。興奮したブッシュはそれを言ったのである。これは彼つまりアメリカ原理主義者の本音だろう。以後パウエル国務長官などが、ブッシュの興奮した十字軍路線から「テロ撃滅」へとターゲットを限定するのに神経をすり減らした。しかし、ブッシュの言ったことは当然世界に流れた。その結果かどうか、空爆が始まってからイスラム諸国における反米デモが起こってきた。ビンラディンとタリバン指導者は「聖戦(ジハード)」を呼びかけている。
さて、イスラム教徒の数が世界でもっとも多い地域はどこか。言うまでもなくインドネシア、マレーシアからフィリピンのミンダナオまでのアセアン地域だ。ここが、ビンラディンの「文明の衝突」戦略に巻き込まれればどうなか。反政府暴動という形でアセアン諸国の政府が危機に瀕し、この国々に囲まれるマラッカ海峡、ロンボク海峡をはじめ、わが国のタンカーが通過する石油の海路が断たれる。これはわが国経済の壊滅を意味する。
よって、わが国が今為すべきことは、アメリカに直言できる主体的な国家保全の戦略を確立することである。そして、テロと海賊からアジアの公共財である海路の安全を確保する体制を構築しなければならない。わが国がアセアン諸国と共に、共通の脅威である海と陸の政情不安を除去する方策を整えることは、最重要の国益と知るべきである。わが国には、それを実行する力とアセアン諸国の信頼がある。
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