北京の六カ国協議・・・種の開いた手品か

No.271 平成19年 2月10日(土)

 昨日夕刻、新幹線で東京から大阪方向に移動していた。
 その時、ニュースやコマーシャルが流れる車両前方の電光掲示に、現在行われている北京の六カ国協議の状況が流れていた。

 読書を止めてその右から左に流れる電光掲示を眺めていると、十数年前の米朝合意の巻き戻しを観ているような錯覚に陥った。十数年前にも同じ文句がここに流れていたのではないか。
「北朝鮮、核開発施設凍結の用意、その見返りを要求」と。
その時、カーター元大統領が金日成主席に会いに行って会談し、米朝は「合意した」のだった。
 
 そして、どうなったか。
北朝鮮は、合意に基づくアメリカや日本からの金や重油等提供を当然のように受け取りながら、核とミサイルの開発にせっせと励み、ミサイルを飛ばし核実験をした。
 よって、この度、再び、非核化のための「合意」に向けて北京で話し合いがもたれているというわけだ。
その内容は、当然ながら、十数年前のビデオの巻き戻しの如くである、ということになる。

 さて、この時のアメリカ・クリントン政権のいい加減さや日本の追随が、さらに深刻なこの度の事態、北朝鮮の増長と背信、核実験とミサイル開発継続とをまねいているので、言いたいことは多岐にわたるのであるが、気になる次の一点だけ指摘したい。
 
 それは、現時点でマスコミ報道に現れてきた、日本が、他の協議参加国から「取り残される」、「孤立する」などの論調である。この論調は、当然に政府内の一部にある意見を受けたものであろう。
 つまり、北朝鮮は以前踏みにじった「合意」を再びしてもよいと言っている。その見返りに制裁解除や金品を要求している。
つまり巻き戻しだ。そして、日本以外の五カ国がその合意に流れ始めたら、日本はどうするのか、その時日本だけ流れなければ、取り残され孤立するではないか、というものである。

 そこで、私は指摘したい。
 断じて流されてはならない。日本のマスコミがそれを孤立というならば、それはまさに「名誉ある孤立」である。それでいい。
 
 六カ国の内、自国民の拉致被害者救出を最重要課題として掲げるのは日本だけである。当然である。自国民が拉致されているのだから。しかも、この国民の幸せと人権を確保する政府であらねばならないということは、我が国家の至上の課題である。
 六カ国の枠内だけをみているから孤立とか言う言葉が出るのであるが、国家というものの存在価値と普遍的な任務と広くアジアと世界の諸国民の心情を思えば決して孤立ではない。
 
 そもそも協議に集まる六カ国とは何か。
中国・ロシア・北朝鮮、はっきり言ってつい最近までの仲間であり、自国民の人権など考えない国家ではないか。韓国、今の政権がおかしいので北の仲間に誉められたいだけ。
アメリカ、もともとアジアでじっくり取り組めない状況にある。しかも、歴史上、アメリカのアジアでの判断は必ずしも正確ではない。
 従って、この六カ国の中で、我が日本だけが、国民の幸せのための断固たる言動を国際社会に示しえる立場にある。さらに、数万人の拉致被害者をかかえる韓国国民、物言えない二千万の北朝鮮国民も、この日本の立場に期待しているであろう。
 従って、拉致被害者救出を最重要課題とする我が国は、孤立ではなく、まさに先導する立場にある。

 しかも、この度出始めた「合意」が、本当の「合意」なのか。
今一度、クリントン時代の米朝合意や小泉・金正日の平壌宣言での合意を点検すれば分かるではないか。種の開いた同じ手品に何回引っかかるのか。
 二十世紀前半に欧米では次のようなことが言われたという。
 「ロシア人は、約束は破るものだと思っている。
 中国人は、そもそも約束は守るものだと思っていない。」
 では、北朝鮮はどうなのか。答は明らかであろう。

 我が国は、断固として北朝鮮が提示する、種の開いた手品に乗ってはならない。

 とはいえ、今北京で協議しているのは、各国の局長クラスの実務家である。彼らは職業として本省に何か「成果」を持ち帰らねばならないというような心理をもつ。従って、北京で長時間顔を付き合わせていれば、この共通の心理がお互いに作用して「合意」の方向に流れかねない。
 しかし、我が国アジア大洋州局長は、北京で「孤軍奮闘」するために送りだされた。これが貴官の巡り合わせた仕事だ。

 その上で、安倍総理大臣に申したい。
 担当官を丸腰で孤軍奮闘させてはならない。
 今まさに日米首脳会談の時期が来たと。
 
 安倍総理は、日米同盟を強化し盤石なものとする
「日本の覚悟」をブッシュ大統領に伝え、拉致被害者全員の救出を断じてうやむやにはできないとして、日米の共同歩調を強く要請すべきである。そして、日米両国民のみならずアジア諸国民の幸せと安定は、日米同盟の強化によって確保しうると世界に示すのである。
 
 ブッシュ氏は、昨年、他の国務に優先させて、横田めぐみさんの母横田早紀江さんとホワイトハウスで会った大統領なのである。安倍総理の拉致問題への取り組みも、拉致議連の結成から横田早紀江さんはじめ被害者家族と会うことによって始まった。
 日米首脳は、この母のために、話し合い決断し得るはずだ。
 この一人の母のためにすることは、今は闇の中で光を求めて、苦しみそして闘っている世界の全ての人々のためにすることなのだから。 


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