堺における拉致被害者救出集会

No.221 平成18年 3月13日(月)

 昨日、堺のニュータウン地区にある集会場で北朝鮮による拉致被害者救出集会が開かれた。
 神戸から、有本恵子さんのご両親が駆けつけてくれた。

 昨年の12月には、16日に大阪で22日に東京と、拉致被害者救出・制裁断行を求める国民集会が盛り上がった。それは、昨年12月が、横田めぐみさんの偽物の遺骨をつかまされた官房長官の、「誠意を示さねば経済制裁をする」との予告声明から一年目になるからであった。
 しかし、その声明から丁度一年目の12月24日には、北京で日朝実務者会議が開かれ、また、本年に入っても実務者会議が開かれた。そして、北と日本の実務者が、ああ言った、こう言った、という報道で明け暮れた。・・・つまりガス抜きである。
 その中で、北朝鮮の工作員であったシン・ガンスという者があらゆる拉致に関わっていたかのような情報が北と日本から流されているようだ。
 
 よって、このような国民運動の盛り上がりが収まったかのような状況の時に、昨日の堺のように地道な勉強会的な集会が開かれたことは、非常に重要なことだった。
 私は、基調講演を頼まれたので、以下の通り報告した。

  ・・・  ・・・   ・・・   ・・・

 拉致被害者救出は、単に人の救出に留まらず、国直しであり我々に祖国という国家を取り戻すことでもある。
 我々の国は、マネーゲーム的な利益社会ではなく、古来から共同体である。その共同体である証は、同胞に対する暖かさであり、同胞を見捨てない、同胞を助けるということである。
 よって、拉致被害者救出は、共同体を維持する任務を負う政治の最重要の公務であり、拉致は現在も進行中のテロであるから、一刻の猶予も許されない政治の
「最重要の緊急課題」
であらねばならない。

 しかるに、我が国政府は、拉致問題を如何に捉えてきたのか。箇々の政府間交渉のやりとりではなく、今必要なのは、全体としての大きな流れを把握することである。そうすれば、本年、拉致被害者救出の為の最大の危機が迫っていることが理解できる。

1,政府は被害者総数を把握していない
 先ず、現在政府は、一体何人が北朝鮮に拉致されているか、その総数を把握しているのか。答えは、否である。内閣が情報機関を総動員して調査した形跡はない。警察が地をはう努力をして地道に調べているが、当然ながら、あくまで犯罪捜査機関としての縛りの中である。
 被害者総数把握という本質的な作業をやっているのは、民間の荒木和博さんなどの特定失踪者問題調査会である。
 政府は、拉致被害者総数を把握していないのだ。
 
 従って政府は、一体何人が解放されれば拉致問題が解決したと言えるのか分かっていない。驚くべきことである。こういう状態で、小泉総理のように、
「拉致問題解決無くして国交正常化なし」
と言っていても仕方がないではないか。
 例えば、政府認定の16人で手を打たれれば、はい拉致問題は終わりましたと、それに従ってしまうことになる。事実政府は、第一回訪朝の平成14年9月17日に、北朝鮮から「8名死亡、5名生存」と言われてそれで手を打とうとしたのである。

2,今一度、平壌共同宣言の本質を見極めよう
 その平成14年9月17日に署名された平壌共同宣言とは何か。今一度、この本質を見極めねばならない。
 その本質は、この文書自体が語っている。
 
 先ず、第一条は、国交回復を目的として掲げている。そして、署名した翌月の10月から、国交回復交渉を始めると宣言しているのだ。驚くべき性急さではないか。
 次の二条は、日本が北にカネを渡す約束である。
 この一条と二条がセットであり、このセットを獲得するために以下の条文が続く。
 
 即ち、次の三条が日本政府が拉致問題に触れたと説明する部分である。しかし、文言に拉致の「ら」の字もない。
 ただ、日本国民の安全に関する事項については、両国の不正常な関係の中から生まれたが、今後はそのようなことが起こらないようにするとされている。
 つまり、北朝鮮は、過去の拉致問題はもう終わったことだという前提で、将来にはこのような問題は起こさないと約束しているに過ぎないのだ。次の首脳会談当日の日朝間の動きを見れば、三条の意味がより明らかになる。
 
 北朝鮮は、9月17日午前10時冒頭、日本側に「拉致被害者は8名死亡、5名生存」と告げた。そして、日本側担当者を生存の5名に会わせて、生存者に「首領様に感謝して生活しております」と言わせている。ここで北朝鮮は、「日朝間の不正常な関係から生じた問題」の説明を終えたわけである。そのうえで、共同宣言への署名は、7時間後の午後5時であった。
 また、丁度共同宣言署名の午後5時頃に、東京では集まった家族に政府が北朝鮮から教えられた被害者の消息を告げているが、それは、
「まことに残念ですが貴方の娘さんは既に死亡されています」
という言い方であり、北朝鮮の伝達をそっくり信じ込んだ「死亡宣告」そのものであった。

 この9月17日当日の共同宣言署名にいたる経過と第三条の内容をみれば、
「拉致問題解決無くして国交正常化なし」との方針を打ち出していた小泉総理は、拉致問題は自分の訪朝で一挙に解決したと思いこんで、共同宣言に署名したとしか思われない。従って、共同宣言第一条には、異様な性急さで国交回復交渉開始がうたわれているのである。この性急さは、小泉総理においても拉致問題は終わったという前提でなければ説明がつかないではないか。
 
 事実、総理帰国から数日後に、8名死亡は嘘だ、息子や娘は生きている、と家族が声を上げたことにより翌10月の「国交回復交渉」は不発に終わっている。この家族の声が無ければ、8名死亡は事実との前提で10月から「国交回復交渉」が始まっていたことになる。

 つまり、平壌共同宣言とは何か。
 それは、拉致問題が過去のものであるという確認と国交回復交渉開始を宣言したものであって、第二条がカネの支払いになっていることから明らかなように、北朝鮮の思惑を露骨に反映した文書である。
 共同宣言の四条以下は、核とミサイル問題で国際条約に従うという北朝鮮の約束であるが、ご承知の通り、北朝鮮は既にこの約束を踏みにじっている。

3,我が国内閣は何を目指しているのか
 北朝鮮の狙いは共同宣言第一条と二条に現れているが、我が小泉内閣はどういう目的を模索しているのか。
 
 小泉総理は昨年七月の発言で、自分の任期中の国交正常化実現に意欲を示した。この発言は、郵政民営化報道で目立たなかったが、小泉総理のもう一つの執念では無かろうかと思われるのである。
 
 この総理の発言までの間、北朝鮮の言う八名死亡は嘘偽りと判明し、提出された遺骨や死亡診断書は偽物であり偽造であると判明し、昨年2月10日には北朝鮮は核保有宣言を行ったのである。つまり、総理が金正日と握手して署名した平壌共同宣言の前提と約束は全て北朝鮮によって裏切られてきた。そして、その上での、あの総理の国交回復発言なのだ。まさに裏切られ翻弄されても・・・、異様な執念と言ってもいいではないか。
 
 しかし、ここまでされれば、国民の怒りは盛り上がり、制裁を求める声が出るのは当然で、出なければ国際社会から日本国民の感覚が疑われる。事実、国民は小泉内閣に制裁を求め続けたが、小泉内閣は反応しない。その間、アメリカはさっさとマネーロンダリングを封ずるために北朝鮮に制裁をかけている。
 小泉内閣は、「対話と圧力」というが、「対話」だけで本年にいたっている。一体、小泉内閣に国際常識があるのであろうか。何か、常識に従って行動できない事情があるのか。弱みでも握られているのか。

 このような中で、昨年9月、他の重要課題がまるで消去されたかのような郵政民営化一色の総選挙が行われたのであるが、その中にあっても、私は第一に
「拉致被害者救出の為に対北朝鮮制裁断行」
の公約を掲げて闘い議席を頂いたことを誇りに思い、この公約実現は私の議席に付与された任務と自覚している。

4,幕引き・切り捨ての危機
 既に明らかなように、小泉総理が、自らの任期中に日朝国交正常化を目指していることは間違いない。そしてこの目標は北朝鮮と見事に一致している。
 日本政府は、未だ拉致被害者の総数を知らない。この中で、昨年末以来、諸悪の根元は原さんを拉致した北朝鮮工作員シン・ガンスであるかのような報道が相次いできている。つまり、彼が、蓮池さんも地村さんも拉致し、横田めぐみさんや田口八重子さん拉致にも関与していると報道されてきたのだ。まるでスーパーマンである。
 
 この状況のなかで、荒木和博氏らと懸念することは、死亡したとされた数名の解放というサプライズ、そして、「諸悪の根元シン・ガンス」の引き渡しか事情聴取による拉致問題の一挙の幕引きと国交正常化へのなだれ込みがあり得ると言うことである。

 こうなれば、一体何人の被害者が祖国日本から見捨てられ切り捨てられるか、計り知れないではないか。
 北朝鮮主導での「解決」では必ずこうなる。小泉総理は、平成14年9月17日の平壌で身にしみているはずだ。家族が声を上げなければ、小泉内閣は生きている8名を死亡として葬り去る寸前であったではないか。
 
 この邦人切り捨てという危険を防ぐには、我が国が主体的に制裁という圧力をかけて国民救出という国家目標を実現するしかないのである。
 総理大臣の功名心と思いこみは分かる。しかし、それに引きずられて国民保護と国家主権回復という重要課題が没却されてはならない。

 その意味で、まさに、本年は正念場である。
 一人一人が、お国の誇りと任務を背負っているという思いで、拉致被害者救出の熱意を絶やさず盛り上げていかねばならない時である。

   ・・・  ・・・  ・・・  ・・・

 以上が、私の基調講演の概要である。
 ただ昨日、与党から私に対する「議員辞職勧告決議案」が提出されたということで、それに如何に対処するかについてのコメントもした。
 従って、本通信でも次のように述べたい。

 本通常国会開会を控えた1月17日、私は、議員を辞職しないという結論と理由を公表して、現在まで公務を続けてきた。今となって辞めるべきと言われても、この結論を、変更すべき理由はない。また、苦悩の続く日夜を経て公表した結論は替えられるものではない。
 ただ、私が、単に議席にしがみついているかのような表現をしているマスコミもあったので、次のことも申し添えたい。
 
 私に対する本決議案を提出した与党各位が、拉致被害者救出のために対北朝鮮制裁の必要性を深思され国民の願いを理解されたうえ、対北朝鮮全面制裁を決断され、
「政府をして今週中に北朝鮮に対して全面制裁を断行される」
ならば、拉致問題解決に大きな転機が生まれ、私の議席に国民有権者から付与された任務は一つかなえられるのであるから、私は、考えを変えることが出来るのである。
 


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