本日、午前10時より、衆参両院議員が集まった衆議院本会議場において、中国の温家宝首相の約40分間の演説があった。出席して聴いてきたので、その感想を述べたい。
温総理の演説原稿が配布されていないので、正確にしゃべった通りをたどることは出来ないが、概略以下の通り構成された演説であった。
まず、日中の歴史を述べる。
稲作栽培、養蚕技術、仏教、漢字、絵画、芸術文化など日本にある全ては、中国から移ったものであると述べ、鑑真和上の日本渡航の苦労や、安倍仲麻呂と李白や王維との交際と遣隋使遣唐使の派遣などの日中友好の歴史を回顧した。
次に、日本の侵略戦争は中国人民に大きな悲劇をもたらしたが、中国人は戦後には仇を忘れて多くの日本人を祖国に帰還させ、置き去りにされた孤児を育てた。
しかし、この日本の中国侵略は、一部の軍国主義者がしたことであり、日本人民は中国人民と共に、日本軍国主義者の被害者なのだと述べ、この歴史の教訓を日本が態度で示すか見守りたいと念を押した。
そのうえで、中国は侵略の被害から立ちあがり努力して世界が注目する発展を遂げてきたが、人口が多くて未だ発展途上国であるから、日中協力が必要である旨を述べた。
そして、中国は一貫して平和を愛し人民の幸せの為に大いにがんばってきたので、これからも日中友好を促進しようと締め括った。
演説態度は、堂々としており、やはり中国人だと思うと共に、要所要所で、演説を止め、自ら拍手して、会場の拍手を促す。すると会場から大きな拍手が起る。こういう場面が、演説中、十回以上あった。つまり、我が国衆議院本会議場は、よく映像で観ることがある共産国家の「人民大会堂」的雰囲気を漂わせたのである。
ところで、この時の衆議院本会議場には、日中両国人民のもつ文明・文化の形が見事に現われていた。
即ち、集まった我が国の衆参議員は、日本人として来日した中国首脳に歓迎の意を表する場と心得ており、この儀式においては歓迎の姿を示すのが礼儀であるから、拍手する場面を探して真実素直に「和」を作り上げようとしていた。
他方、多数の随員とともに本会議場に入った温首相は、その「和」の雰囲気に乗った上で、堂々とにこやかに実態と正反対のことを得意げに演説していた。ここまで、うそを堂々と言えるということは、中国人の貴重な政治的資質及び才能であると思う。
日本人は、一つの古語や教訓がある民族に伝わっている時、その教訓通りにその民族が身を処してきた証であると受けとめる。したがって、例えば論語を始めとする四書五経の教えが中国にあるので、中国人は立派だと思いがちである。
しかし、日本人とは反対の捉え方がある。
つまり、そういう教えが伝わってきたのは、まさにその教えと正反対の社会であるからだという捉え方である。現実には無いのであるから、せめて書物の世界だけでも在るようにしているに過ぎないと考えれば、中国政治の説明がつくのである。中国の近現代の政治特に共産中国の政治に、仁・義・礼・忠・信などの要素を見つけられるであろうか。これらは、全く無い。したがって、共産中国においてもこれらの教訓が伝えられているのである。これが中国である。
したがって、温首相が演説の中で、中国の教訓に満ちた古語を引用した時、魯迅の「狂人日記」の最後の一節を思い起こした。即ち、中国では、それらの美しい教訓に満ちた文章の行間には、「人を食う」という文字が書いてある、と魯迅は締め括っていたのである。
さて、チベットやウイグルを侵略して人民を殺戮しつつ、核ミサイルの増強を続けながら平和を愛すると述べ、尖閣諸島を勝手に中国の領土と主張し、反日教育を続け、我が国の国連常任理事國入りに猛烈に反対しながら日中友好を呼びかける大演説に、拍手はあった。
しかしこれは、日本人が日本人的に対処しただけであって、これをもって、今までのパターン通り、中日友好で実利がついてくると思うならば、大きな誤算となるであろう。
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